鉄道省日ノ影線

 1935年2月20日に鉄道省日ノ影線の延岡駅ー日向岡元駅間が開業しました。翌年1936年4月12日には日向岡元駅ー川水流駅間が、さらに翌年1937年9月3日には川水流駅ー槇峰駅間が、2年後の1939年10月11日には槇峰駅ー日ノ影駅間が延伸開業しました。戦後、日ノ影線の運営は日本国有鉄道(通称国鉄)に移管されました。

 1957年2月1日には細見・吐合・上崎・亀ヶ崎の4駅が新設され、1967年に槇峰鉱山、1969年に見立鉱山が閉山されるまでは鉱産物の輸送も行っており、高度経済成長期の日本を支えていました。1972年に日ノ影駅ー高千穂駅間が延伸開業し、国鉄高千穂線が誕生しました。

延伸工事の凍結

 高千穂線は将来的に久大本線・豊肥本線に続く第3の九州横断鉄道路線として国鉄高森線(現在の南阿蘇鉄道高森線)まで延伸する予定でした。1973年に工事は着工され1977年には高千穂駅ー高森駅間が開通の予定でした。1975年2月、工事は順調に進んでいき高森峠を越えるためのトンネルである高森トンネル(6500m)の掘削中に事故は起きました。

 掘削中、水脈に当たってしまい、トンネル坑内で36t/分という異常出水事故が発生しました。これにより高森町では湧水八箇所が枯渇、井戸水を使用していた住宅約1000戸で断水が起こり、当時の国鉄は工事を中断せざるを得なくなりました。最終的に高千穂線と高森線は第三セクターへと転換されましたが、未成区間の工事が再開されることはありませんでした。現在、未成区間の一部は観光客用に開放されている箇所や酒造会社の酒蔵に使われています。

国鉄、JR、そしてTRへ

 1987年に国鉄民営化により高千穂線は九州旅客鉄道(JR九州)へと移管されました。しかし、その一年後には第三セクターへと転換が決定し、国鉄民営化から2年後の1989年に第三セクターの「高千穂鉄道(TR)」に移管されました。この際、運行本数の増発や日ノ影駅での夜間停泊の廃止を行い、1991年に観光用途向けのTR-300形気動車を導入、1995年には日ノ影駅を日之影温泉駅に名称変更、2003年には観光用トロッコ車両「トロッコ神楽号」を導入し、地域輸送・観光輸送の両方の面で活躍しました。当時の営業係数(100円の収益を上げるために必要な額)は135.5とローカル線の中では比較的良好でした。

突然の災害

 2005年9月6日、宮崎県をはじめとする九州・四国を台風14号が襲いました。この台風は最大風速50m/s、最低気圧925hpsとかなり強力なものでこの台風による五ヶ瀬川の増水により高千穂線は第一五ヶ瀬川橋梁と第二五ヶ瀬川橋梁の2つの橋梁を流失するほか、川水流駅が保線用車両ごと水没、日之影温泉駅で路盤が流失、そのほかにも倒木や土砂流入などといった被害をもたらし総復旧費用は26億円。同年12月に廃止の意向が決定し、2007年に延岡駅ー槇峰駅間が廃止され、翌年2008年には槇峰駅ー高千穂駅間が廃止となり、高千穂線は73年の歴史に幕を下ろしました。

              

廃止後から現在

 台風災害直後、多くの沿線地域で駅の清掃活動や線路上での草刈りなど、復旧を希望する住民たちによる活動が行われてきました。また、地元住民以外でも全国の鉄道ファンからの金銭的支援も多くありました。しかしそれも虚しく、結局は廃止が決定してしまいました。

 しかし、高千穂線の廃止後も地元での鉄道への愛着は残っていました。皆さんの心の中には「もう一度この場所に列車を」という思いがありましたが、残された鉄道遺構は次々と撤去されていきました。しかし地元有志によって旧沿線地域で駅や線路跡の保存活動が行われていきました。

 高千穂町では現在、高千穂駅から天岩戸駅を経由して高千穂鉄橋(高さ105m・日本一)までトロッコが運行されています。また、日之影町の深角駅でも地元の方がトロッコの不定期運行をされています。

 しかしながらそれは一部に過ぎません。ほとんどの箇所において線路は撤去され、良くて遊歩道化、悪ければ宅地開発などにより鉄道の面影を完全に失っています。私たち五ヶ瀬川鉄道保存会は高千穂線を将来に残すための保存活動を行なっています。将来的には撤去された鉄道設備を再設し、部分的な形ではありますが、鉄路復活を夢に努力しています。

              

将来の展望

 私たち五ヶ瀬川鉄道保存会は、現在、延岡市北方町の上崎駅にて駅ノートの設置・管理やSNSを通した普及活動を行なっておりますが、廃線跡地の鉄路を利用した動態保存計画も存在します。それは、今でも残存している鉄路上で簡易的なトロッコ車両を走行させることです。

 現在、高千穂町の高千穂駅〜高千穂鉄橋間、日之影町の深角駅などでは、廃線跡の鉄路を利用して動態保存が行われています。当保存会は軌道が残存している区間のうち、廃線から手付かずの区間を整備し、将来的には簡易的なトロッコ車両を運行させます。これにより、外部からの観光流入が発生し、地域経済が発展します。さらに、地域経済が発展することにより、鉄道の廃線によって廃れた旧沿線地域にもう一度活気を取り戻すことに繋がります。

 この計画を達成するためにも皆様のご支援・ご賛同心よりお待ちしております。

LISTS

               

ACCESS

上崎駅
  • 〒882-0126
    宮崎県延岡市北方町上崎小字辰913

    宮崎交通上崎橋バス停より徒歩5分

    延岡駅より30分、高千穂バスセンターより1時間

日之影温泉駅
  • 〒882-0401
    宮崎県西臼杵郡日之影町七折3235-5

    宮崎交通日之影駅前バス停すぐ

    ※現在宮崎交通バス高千穂線(旧道経由)は運休中です。